2009年度 社会文化システム学科
2年ゼミ フィールドワーク・オリエンテーション――地域を歩く
 フィールドからの一葉
コース2 本郷界隈――知と権力の祖型をあるく

教員のフィールドノーツ
東洋大学[13:40 出発]−@誠之小学校[14:05]  明治6年開校の文京区で3番目に古い小学校。備後福山藩丸山中屋敷跡地。越境入学がしばしば問題になる。その意味で、「文京区的な」小学校。
A西片住宅街 戦災にあわなかったため旧家が残る(戦災にあわなかった理由も考える必要がある)。夏目漱石、坪井正五、和辻哲郎(東洋大でも講師を勤めた)などが住んだ。学者町と呼ばれる。
B本郷館[14:25] 1905年築の木造下宿。岡崎藩の江戸屋敷跡地。東大の留学生や資産家の子弟が利用した。
C鳳明館別館  研究者や文人が利用した和風旅館。戦後に火災で燃えた後、再建。本館は築100年を越す。
D求道会館  1915年築の浄土真宗大谷派の施設。一見、キリスト教会のような外観。京大建築学科の創設者・武田五一の作品。
F太栄館(内部見学・話を聞く) 金田一京介に紹介された石川啄木が止宿した旅館。東大見学の修学旅行生も宿泊。
F赤門[15:00](ここから東京大学)  東大の代名詞。加賀金沢前田家の上屋敷の御守殿門。1827年築で、本郷キャンパスで一番古い建物。
G法文1号館(内部見学)  1935年築。内田祥三(第二次世界大戦時の東大総長・建築学者)による設計。東大ポポロ事件の現場。
H安田講堂  東大のシンボル。1925年築。上記の内田の設計。東大紛争の主要舞台。
I総合図書館(内部見学)  関東大震災後、にロックフェラー財団の寄付により建設。1928年築。本の背表紙を並べた様子がモチーフ。建築過程の展示をみる。内部の赤い絨毯は「権威」提示の装置。
J三四郎−赤門横のフレンチカフェで一服(ここまで東京大学)  [16:40 一部解散]
Kかねやす 江戸時代の「首都圏」のきわ。もともとは歯磨き粉販売店。「本郷もかねやすまでは江戸の内」
L日本基督教弓町本郷教会 1926年築のプロテスタント教会。東大職員をはじめとするキリスト教系知識人の信仰の場。
M旧福士政一邸 明治初期の建築。もともとは、明治の文部官僚で教育勅語の設計者の一人である辻新次の邸宅であった。この周囲は(役人世界での、という意味だろうか)「出世街道」と呼ばれる。福士政一は病理学者。
N東京ドーム−O文京区役所(文京シビックホール) [18:00 解散]
感想: 
 学生にとっては、やはり東大が目玉だった。このフィールドでは、知と権力との関係を「斜め」にみてみることを意図していたが、はたしてどの程度、理解してもらえたかどうか。図書館の赤絨毯の権威主義志向(嗜好)の趣味の悪さは感じたかもしれない。中に入り、実際に見てみたのはよかった。単体でインパクトが強かったのは本郷館だったようである。ちなみに文人関連の史跡等は、私自身の知識がないのでもともと積極的に見て歩くつもりはなかったが、文学への興味からこのコースを選んだという学生が一人もいなかったのはちょっとさびしい。
 出発前に文京堂でノートを買い、少なくとも訪問場所と時間は記録し、できれば簡単な観察記録や感想をメモ書きをするよう伝えた。ほんの初歩の初歩ではあるが、フィールドノーツをつける練習にはなっただろうか。
 なお、前日に東大の広報センターに行き、担当者から説明を受け、パンフレットや地図などをもらった。とても感じがよく、優れた広報センターだった。同センターの細谷恵子さんに、記してお礼を申し上げます。(長津一史)
本郷館前にて
求道会館
大栄館
東大赤門
フィールドノーツをとる学生
三四郎池にて
旧福士邸
 学生のスナップショット
 
 14時16分 本郷館 明治38年に建てられた木造の下宿屋。関東大震災や東京大空襲に遭いながら、ほとんど姿を変えずに今なお存在している。近くで見るととても迫力のある建物だった。こんなに古い建物が今でも残っていて、現在でも東大生が下宿しているということに驚いた。建物の中に入ってみたかったが見学できないらしくとても残念だった。(鵜澤)  本郷館はとても古く、文京区の中にこんな古くから建てられた家があることに驚いた。今でも学生が住んでいることを長津先生の話から、また、洗濯物が干してあることを知って、ここでの生活がどのようなものなのか、部屋のつくりはどうなっているのか、気になった。今は、宿としてでなく、家という形に本郷館はなっているため中に入って見学はできなかったので、先生から頂いた資料で歴史を少し知ることができて良かった。
 先生の話から、この建物は、またこの近辺は、知識人が集まっているため戦争で焼かれなかったことを知った。その分、別の地域が焼かれたという事実を分かり、戦争について、人や国家の意図をこのコースを歩いて知ることができた。本郷館だけを本で調べていても周りの建物との比較ができなかったと思うが、実際に歩くことで比較することができて、フィールドワークの利点を実感することができた。(中村)
本郷館 
 東京大学生の学生寮。昭和33年から現在にかけて、さまざまな学生が青春時代を過ごしてきたのでしょう…。 (前原)
 ここは白山キャンパスからあまり遠くない位置に、数々の偉人や著名人を輩出してきた築100年の寮です。今でも東大の生徒が入居していて、戦火を免れて現代まで残っている姿を見て、圧倒されました。(荒川)
 一番印象に残ったのが、明治38年に建てられた本郷館でした。第二次世界大戦の時に、相手は爆弾を東大付近に落とさないようにしていたので、当時のまま残っているようです。戦争の歴史も含まれていて、様々な歴史を乗り越えてきたと思うと、感動して見とれてしまいました。(吉牟田)  太栄館にて撮影。石川啄木などの文人が泊まっていたとされる。(若桑)
 13:50に東洋の校舎を出発し、東京大学にかけて小路を歩いた。戦争のなごりを残した建物がたくさんあり、歴史を感じられる時間が過ごせた。石川啄木が実際に宿泊していた宿にも足を踏み入れることができて、この機会がなければおそらく知ることがなかったであろう体験ができた。古くからある下宿屋が東洋大学のこんなに身近にあるのは、新たな発見で、とても新鮮だった。
 東京大学は予想以上に規模が大きくて驚いた。緑が豊かで、たくさんの日当たりの良い休憩スポットや、なんとキャンパス内に池があったりと、過ごしやすい環境だった。これなら私にも勉強がはかどるのかもしれない……! (長浜)
東京大学三四郎池で撮影した写真です。
 今回のオリエンテーションで東洋大学の周辺を散策し、新たな発見をたくさんすることができました。街のなかは新しい建物と昔からある古い建物とが混ざり、とてもおもしろい景色でした。実際に歩いたことで予定にはなかった新たな発見をしたり、聞くだけではなくどんなに坂が多くきついかを体感できました。東京大学は古い建物や、新しい設備の整ったきれいな研究棟などに感動しました。写真の三四郎池のように自然も豊かで、敷地の広大さに驚きました。そこで迷子者もでたくらいです。昔は加賀藩の敷地であったから池があったり、赤門付近の壁に特徴があったりと歴史の重みを感じました。
 今回のオリエンテーションで、身近な地域にもおもしろいものが多く潜んでいて、自分で実際に歩いて、見て、聞くことがすごく大切なことだと実感しました。これから、授業でフィールドワークを行う際も視野を広く持ち、新しい自分なりのおもしろい発見をしていきたいとおもいます。(田村)
安田講堂
 初めて講堂を見たが想像していたよりも小さく感じられた。昭和を振り返る映像を見ていると安田講堂を舞台に学生が警察隊と攻防を繰り広げているシーンがよく出てくるが、その時代の学生は今の学生と違って目的を達成するためならば武力行使にも出るほど活発という印象を持った。昔は学生運動が盛んであったらしいが、今ではそんなことがあったことすら知らないという人が自分も含めて多い気がする。建物を見ながら、「過去にこういう出来事があったのか」と想像するのはとても楽しい。たまに自分も昭和に生まれていろいろな出来事を体験したかったと思うときがある。(柴山)
ワンショット(大塚)
東京大学内のカフェ UTcafe 
 東京大学内は大学とは思えない施設だらけだった。お酒が飲めるお店があったり、こんなもの大学でわざわざ買うのかなというような物をお店で扱っていたり、大きな池があったり。大学というよりも一つの町のようだった。また、東大オフィシャルグッズショップや UTcafe(University of Tokyo cafe)のように、「東京大学」というブランドでお店ができている。
 確かに東大は日本一頭がよくてすごい大学だし、東洋大学である自分が言うと僻みっぽく聞こえてしまうかもしれないけど、このカフェはちょっと..どうなんだろう?と思ってしまった。(向山)
ワンショット(今関)